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グルメの傷跡本(05年3月22日版)

東京 味のグランプリ1985



山本益博著
講談社 1985年4月

山本益博さんの「東京 味のグランプリ」シリーズは、山本さんを一躍有名ならしめた1982年4月刊行の『東京 味のグランプリ200』に始まったが、調査員らしきを使って「ミシュランをこえて」と大口たたいた割には続かず、手を変え品を変え目先を変え、昨年の『東京・味のグランプリ―勝ち抜いた59軒』で、イノチ尽きた感じがある。

ついに自ら「食べる名人」と名のるに至った、めったにない鼻高々の人物の著作のなかでも、この『東京 味のグランプリ1985』は、もっとも研究価値の高いものだろうと思う。なにしろ、その「まえがきに代えて」の「拝啓 丸谷才一様」は、噴飯モノとして秀逸だからである。

山本益博さんから始まったグルメの悪癖は、ここに集約されているといっていいだろう。もっとも、悪癖は山本さんの責任ではない。山本さんは、先駆者としてそれなりの働きをしたし、ちょっとこの人オカシイと思わせるようなハッタリ居丈高の底には、ヘドロのように沈殿したアタマのよさ「コンニチ的知性」も感じられる。山本さんの成功を真似した、とくにB級グルメ、なかでもラーメンやカレーライスの単品グルメに、悪癖の責任がある。

その真似され増幅された悪癖の数々を検証するために、この本は、研究価値が高いといえる。

(詳細後送)

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